※文中の[]内の数字に対応した注釈が
文末にあります。この記事内容は
新型コロナウイルスへの感染を
予防したり、
治療を保証するものではありません。

あなたこなたです。
コロナ渦となり約一年半になります。
変異株の影響は大きく、医療崩壊が始まりました。

昨年第一弾の記事で東洋医学の可能性
についての記事を書きました。[ii]
残念ながら、今でも東洋医学の活用は
あまり聞こえてきません。

その間に兵庫県、大阪府は医療崩壊に至りました。
バリアフリーチャレンジのメンバーである
橋本さんがシェアしてくださった、

ある訪問看護師さんの記事[iii] 

を読んでも思いますが、
コロナ病棟、訪問医療にて
日夜戦っておられる医師や
看護師の皆さま、各地保健所で
心身すり減らして自らの責務を
全うされている職員の皆さまには、
感謝と尊敬の気持ちを
どれほど持っても足りないくらいです。


今回の記事は長いので前半と後半の
二部構成にしています。

前半は、医療関係者の目に入ればいいな
と思ったので一般の方には
難しいかもしれません。

後半は、
「今の医療崩壊は急に起こったものなのか?」
について書いています。

前半が難しい方は
後半だけ読んで頂ければありがたいです。


中医学を少しばかり学び、

鍼灸師として活動している私は、
今すぐ飛び込んでいきたい気持ちですが、

何も出来ないのが腹立たしいです。
せめて私の知っている知識等が
少しでもお役にたてれば嬉しいです。

前半:

温病学について


中医学には温病学(うんびょうがく)という、
発熱が強い感染症に対して
発展してきた理論があります。
温病学は江戸時代頃に中国で成熟した
と言われる理論で、
主に病気の進行が早く、
鼻や口から感染し、強い熱性で感染力の強い
感染症に対しての理論だと言われています。


日本の漢方では傷寒論という理論が有名であり、
最も利用されてきました。
中国ではその傷寒論では対応しきれない
病気に対して、温病学が発展した
と言われています。

今までの日本で傷寒論を使って治療する方が
効果的であったのは、明治期に有名な漢方の先生が
温病学を知りながらも、
それほど活用しなかったことから予想されます[iv]

それは当時の日本の病気が漢方で言う
「寒邪」から来ており、
「熱」と「寒け」の
両方を症状とすることが多かったからだと思います。

しかし、新型コロナウィルス、
特に変異株に対しては温病学を使った治療法の方が
良いと思います。
というのも、温病学が
「想定している病気」が「変異株の症状」
良く似ているのと、
漢方・鍼灸は
ウィルスの違い】により治療法を決めるのではなく、
患者さんの【体質】と【症状】に合わせて治療法を決める
からです。

変異前の型であろうと、
イギリス型であろうとインド型であろうと、

患者さんに高熱と呼吸困難があれば、
それに対する治療法は同じです。
今後、更なる変異株が出てきても
漢方・鍼灸であれば、その時に対応できて、

症状を軽くできる可能性があります。
一例を考えてみます。

温病学による一例

例えば患者さんに、

①発熱があり、寒気が無く
汗が出て、喉の渇きが強く、咳、呼吸困難、胸痛
があり、嘔吐、下痢、便秘、意識障害がない場合
麻杏甘石湯が良いとされます。
鍼灸治療では、高熱の場合は
頸椎と胸椎の間や肘から瀉血をすると
発熱は下がります。
咳、呼吸困難には、胸部への
鍼や灸で軽くなります。


②高熱で、喉が渇き、冷たい飲み物を飲みたくて、
汗が多く、項が少し冷えて、水分不足の時は
白虎加人参湯が良いとされています。
鍼灸治療では、熱の下げ方は同じく瀉血を行い、
喉の渇き、項の冷えには。手や腕、首周りの鍼や灸で症状が軽くなります。

ただ、下痢や嘔吐、便秘または発疹や意識障害
あれば、それぞれ全く違う薬になり、
それからさらに個人の体力やその他出ている症状
に対して加減をする必要があるので

そのまま市販の漢方薬を飲んで良い
とは言えません。むやみに飲んだら逆効果になる。
そこが専門家を必要とする理由です。

細かい治療法は患者さんによって変わるので
詳しく書けませんが、感染症の症状を軽くする方法は
漢方・鍼灸にもあるのです。

まだ温病学を使った漢方を処方出来る医師
は少ないと言われていますが、
中医学を学んだ医師、薬剤師、鍼灸師
は増えてきています。

在宅療養で西洋医学による治療が何もできないなら、
ただ何もせず入院の順番を待つよりも、症状を少しでも軽くするために
やってみる価値はあると思うのです。


温病学を勉強した漢方医、漢方薬剤師や鍼灸師を
探してみてください。

た、漢方を扱っているかかりつけ医や薬剤師が
温病学をまだ知らない可能性もあります。

日本語の良い本も出ていますし、
youtubeに講座もあります[v]

先生同士のつながりもあるでしょうから、
ぜひ使ってみるように勧めてみてください。


変異株にいつ感染してもおかしくない状況です。
あらかじめ環境を作っておくことで、
在宅でも危険性を減らせるかもしれません。

医療制度に阻まれ、ただ座して待っていても、
自分の命に誰も責任など取ってくれません。
少しでも生きる可能性を広げていきたい
と思っています。

私の願いは一つなのです。
「生き残りましょう」

後半:

医療崩壊は急に起こったのか?


今回の医療崩壊は医療制度と政治行政による
運用の失敗が原因と思えます。
台湾・シンガポールはコロナ対応に
今のところ成功しています。

また、西洋諸国の中には感染者数のわりに
医療崩壊を起こしていない国もあります。

日本の場合、医療崩壊は80年代以降の
医療行政がしてきた、その場限りの制度変更や
病床と医師数のバランスの悪さ
が根本にあると思います
[viii]
80年代以降の医療行政に対して
警鐘を鳴らす人はいました。
しかし良くなることはありませんでした。
結果、
「来てほしくなかった時」が
とうとう来てしまったという感じです。


例えば、温暖化が進むことで
熱帯・亜熱帯の感染症が北上し、

日本でも問題になる可能性は
以前からわかっていたはずです。

全国的に保健師の数は増加していますが、
地域感染症対策の司令塔となる保健所の数は
大きく減らされました。
その代わりの対応は何もせず、
だ予算を減らしていったのは行政です。

今、人口10万人に対して保健師の数が
少ない大阪府に対して、同じくバリアフリーチャレンジの
ライターでもある小山さん、荒川さんが、
大阪府の保健師を増やす活動をしておられることには
頭が下がります
[vii]

医療制度を変更してきたのは
医師である医系技官です[ⅺ]
今回のコロナ渦も福島原発の問題同様、
ある意味で人災なのだろうと思います。

数字だけ米国に合わせて
(人口当たりの医師数、看護師数は両国だいたい同じ[viii])、
さらに予算を戦略なく使ってきた医療行政の失敗
と思えます。

そして今、コロナ患者に関わっている医師は
全体の何パーセントでしょうか?
それほど多くない印象です。

なぜならコロナ関連病床自体が全体の3.1%
だからです。
[viii]
ホテル療養、自宅療養でも
主戦力になっているのは
看護師、保健師であり、
医師の姿は少ないように思います。

医師国家試験は医学部生が望んで受ける試験
であり、強制ではありません。
必修の解剖実習はご献体という
生身だった命を使って学ぶ授業です。

他人の命で成長させてもらい、
生活させてもらっているその医師が、
どれくらいこのコロナ渦で
命と向き合っているのでしょうか?

一番先に、一番多く
関わらないといけないのは
医師だったのではないでしょうか?

レビで解説している医師は、
解説するために免許をとったのでしょうか?
私の祖父が生きていたら何と言ったか。
そう思わずにはいられません。

もちろん病棟であれ在宅であれ、
最前線に立つ医師もいらっしゃり、
その方々へ尊敬の気持ちは持っています。
最前線の医師も制度の壁に
翻弄されているのだろうと思います。

しかし、そもそも医療において最高の権限を持ち、
ほかの医療従事者に対して絶対王政的な、
中央集権の制度を作ってきたのは医師自身なのです。

つまり、現在の医療崩壊は他ならない
医師自身のやってきたことが
原因の一つなのです。

今、最前線に立つ医師個人には
責任はないかもしれません。
医療従事者に理解のある医師も
少なくないことは知っていますが、

医療業界にとっては、
いまの状況は「来る時が来た」だけなのです。

ただ、ここでも神出病院での特集記事で書いたように[ix]
共同体の病、業界の病として、
少数の医師にしわ寄せが起こっている
ようにも見えます。

少数の心のある医師が最前線に立ち、
医師としての責任を全うされているのが
現状だと思います。


へき地医療に関わる医師など、
コロナ病棟の最前線に
立ちたくても立てない医師もいるでしょう。

自分の部署で自分の責任を果たされている医師も
多数いることでしょう。
それはそれで十分な責任を果たされている
と思います。
最前線だけが闘いの場ではなく、

その周辺も重要な仕事
なのはわかっています。

では、医療制度を改悪し、
ほかの医療従事者を育てもしないで、
権限の集中によるうま味だけ吸ってきた医師は
今、最前線に立っているでしょうか?


この状況に最前線で関わりを持てる
鍼灸師も
多いとは言えませんが、
漢方・鍼灸にも新型コロナの症状に対して
出来ることがあると思っています。

さらに、これからも新規の感染症が
現れる可能性があります。

それに対して漢方・鍼灸による施術が
役に立つケースは
たくさん出てくる
と考えています。

今、必要なのは「助けたい」
という志でつながったチームとして
動くことではないでしょうか。

制度を作ったのが人なら、
その制度を超越できるのも人だと思います。
阪神大震災では固定した行政制度と行政の縦割りにより救助救命活動を制限
されたことを忘れないでください
[ⅻ]。

立つことなく関わっている鍼灸師もいるでしょうが、
鍼灸師はじめ、医師・看護師以外の医療従事者
の関わりが広がってくれれば嬉しく思います。

それこそが医療における医療従事者にとっての
バリアフリーにつながると思うのです。

 

 

[i] -1Significant Scientific Evidences about COVID-19(2021年4月9日版)126Pから
https://bit.ly/3o8E2vo 日本感染症学会HPより
[i]-2コロナウイルス:mRNAワクチンにより誘発される抗体に対するSARS-CoV-2 B.1.1.7変異株の感受性,2021年5月6日,Nature
https://go.nature.com/2RQEzpU
[ii]あなたこなた,中医学および日本鍼灸漢方療法に基づく新型コロナウイルス感染症に対する養生法
https://barrier-free-challenge.com/profession/3693
[iii]藤田 愛,1000分の一コロナの訪問看護② 神戸より 5月2日18:25投稿
https://bit.ly/3flVKre (フェイスブックより)
[iv]温病学説を問う 漢方京口門診療所
https://bit.ly/3tHpQe9
[v]中国の漢方に学ぶ「コロナ疫病と中医温病学」梁平先生(漢方・応用編)/ 東洋医学・漢方「六合会診療所」(中野医師の解説)
https://www.youtube.com/watch?v=IvRSlXLmw3g
[vi]渡辺賢治ほか,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方の役割
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14426
[vii]change.org 地域住民の命と健康を守りたい!保健師、保健所職員を増やしてください。
[viii]渡邊幸子,日本のコロナ対策病床「わずか1.8%」、世界トップ級の病床数でも逼迫する理由、2020.12.25
https://diamond.jp/articles/-/258111
[ix]あなたこなた,神出病院事件をコミュニティシステムの病として捉える。
https://bit.ly/3eKqB1v
http://ken-i-kai.org/homepage/covid19_kanpou.html 
[ⅺ]村重直子,医系技官の存在が国民を不幸にしている,2010.09.24
https://toyokeizai.net/articles/-/4982
[ⅻ]小林国男,日本の災害医療の現状と展望,へるす出版、東京、1996年、p.131-5
https://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/circle/98/i626gaku.html 

投稿者プロフィール

あなたこなた
あなたこなた
齢30代。ケアの仕事の地位向上を目指して右往左往と日々勉強中
保有資格:はり師/きゅう師/介護福祉士/公認心理師/登録販売者/整体師/心理カウンセラー/家族相談士/SNSカウンセラー