共通の知人からそれぞれに「面白い人がいるので会ってみては」と勧められ、繋がったご縁。

役者の半数が聴覚障害者で聴者と共創するユニークな職業人形劇団デフ・パペットシアター・ひとみ」(以下「デフパペ」)
で企画制作を担当されている大里千尋さん。

デフパペは実行委員会方式という独自の手法も含めて、
各地で3000回以上の公演実績があります。

このインタビューを契機に私の街、
宝塚市でも実行委員会が立ち上がり、

微力ながら、私が委員長の大役を務めさせて頂きました。

200名超のお客様を迎えて公演は盛況でした。

チケット完売となった宝塚公演当日の客席

公演打ち上げでのデフパペの皆さんと宝塚公演実行委員会の面々(家族含む)

大里さんは劇団と実行委員会の調整役として、公演実施まで
劇団本部のある関東から兵庫まで何度か来られました。

他の地域の公演準備が並行して走っているので
とにかく各地を飛び回る女性です。

ユニバーサルな表現というコンセプト

結成当時のメンバーが今自分たちのやっている人形劇が
台詞や音声に頼っていて人形の動きで楽しんでもらえる作品
を作れているのだろうか、という疑問を抱いたことで
デフパペの表現は生まれました。

「目で楽しめれば、言葉の壁を越えて楽しめます。
障害の有無、言語の違い、年齢を超えて全ての方と楽しめる舞台を目指しています。」

音を聴くのでなく、
視覚など他の感覚で楽しめるようにする等
バリアフリー、ユニバーサルな表現であると同時に、
それが芸術性も伴っているからこそ長年に渡り
活動できているのだと公演をこの目で見て感じました。

※劇のサンプル動画です。

この動画は短いですが、私たちが主催した公演の演目は80分。

注意深く見ていましたが、
聞こえない役者さんも混じっていることが

にわかには信じられないほど音楽と融合していて、

役者さん同士の息もピッタリ合っていました!

聞こえる人と聞こえない人が共創する意義

島本:ろう者と聴者の役者さんが共創することで、

各々の人生にどのような影響がありますか?

 

大里:メンバーで、入団5年目の難聴の男性がいます。

難聴の場合、ちょっとは聞こえることもあるので、
聞こえない「ろう」の方の世界とはまた違う世界に生きてきたそうです。
ろうの世界でもない、でも聞こえる世界にも入れない生き辛さを感じていて、

彼はずっとそのはざまで自分の世界はどこだろうと悩んでいました。

彼は、  そこで聴こえない人も聴こえる人も一緒に演じるデフパペの舞台を見て、
入団を決意しました。

一方で、入団後初めて聞こえない人と接するメンバーは、

そこで初めて手話を始めたり、コミュニケーション方法
について知ります。
聴覚障害者がこんなに身近にいるのを知って、
本当に色んなことに気付きます。

この個人の意識の変化が、
今後社会に影響を与えるきっかけになるかもしれません。

人は、特性の同じ者同士の居心地の良いコミュニティ内で固まりがちですが、
そうではなくて、ちょっとした違いくらいの認識で
社会で一緒に生きていくのが普通。

「ダイバーシティ」がそういうことを指すなら、
それが実現できている一つの前例として、

デフパペは存在していけたらいいな、と
メンバー全員が思っているはずです。

従来の人形劇の概念を変えるチャレンジ

世間的に人形劇は、子どもが見るもの
というイメージがあるところ、
それを打破すべく様々ななチャレンジをしてきたそうです。
・身体表現の要素や手話を組み込む
・日本の古典などの内容を扱う

「大人の楽しめるものは
子どもも楽しめると思っています。」

宝塚公演の作品もアフリカの神話を基に創られたものでした。

「こんなの見せても子どもは理解できない」
と大人は心配しますが、3歳くらいの子どもたちが
休憩なしの80分の芝居を最後まで座って楽しんで見てくれて、
お客様の送り出しで私たちがロビーに並んだ時に
キャッキャ言って、人形の歩き方を真似して
出てきたりしています。
子どもは感覚で舞台を楽しめます。

私たちはデフパペにしか作れないもので、
全ての人に楽しんで頂けるように 大人が楽しめるように
内容面で工夫したり、手話や身体表現を取り入れています。

文化と福祉を繋げる 地域の新たな繋がりを創る

「人形劇という芸術的な部分と、聴覚障害者と共創するという福祉的な部分、

別の角度から、デフパペに興味を持っていただける方や団体を
つなぐことで地域での新たな繋がりをつくっていきたいと思っています。」

劇団の目的として、障害の有無に関わらず楽しめる人形劇
というのがあり、地域ごとにある文化活動とつながる。
他方で、地域の福祉分野で障害者を支えている方々がいる。
地域における文化でのつながり、福祉でのつながりを作り、

「デフパペ」がコーディネートすることで、
地域を盛り上げるイメージのようです。

島本: 人形劇という手段とこの地域密着の手法で
どのようなことを実現したいと考えていらっしゃいますか?

大里: 個人で情報がとれるネット社会になり、

便利な世の中にはなりましたが、地域社会での人の結びつきが
希薄になってきていると私自身の経験からも感じます。
私たちは人形劇というアナログな手段で、
一緒に観劇をする環境をつくります。
それにより人を繋げたいと思っています。

劇団代表善岡修さんのインタビューはこちら