雇用率達成以外にもこの制度の意義はある

本稿は新設した「訓練校日誌」というカテゴリー
最初の記事です。

このカテゴリーでは、
現在通学中の兵庫障害者職業能力開発校
での気付き等を記していきます。

表示されているカテゴリーも
気にかけて頂けますと
ありがたいです。

今回は先日あった行事について。

ハローワークで広く一般募集せずに、
そちらの生徒が欲しいということで
企業が直接学校に求人を出す
「校指定求人」というものがあります。

今回はその求人を出す前段階として、
ある特例子会社の見学会がありました。

今回の場合、見学会に参加した人が
前述の求人に応募できる訳です。

しかし、見学した結果、
私は応募しませんでした。

一見空振りですが、
実際にこの目で現場を
見ることができたことは
今後の就職活動にプラスです。

特例子会社とは

簡単に制度について概観します。

障害者雇用の基本法と言える
障害者雇用促進法にこの制度の根拠があります。

この法律は、ある規模以上の企業に
全従業員のうち一定割合の障害者の
雇用義務を課しています。

これを法定雇用率といいます。

ちなみに、現在の雇用率は2.2%です。

46人の従業員がいれば、
1人の障害者を雇う義務が発生する計算です。

なお、2020年度末までには
2.3%に引き上げられることが決まっています。

特例子会社の制度は
主に、雇用率との関係で
活用されています。

特例子会社は、企業が障害者の雇用を促進する目的で
つくる子会社だからです。
障害者雇用制度の特例として、
事業者が障害者のために特別に配慮した
子会社を設立し、一定の要件を満たした上で
厚生労働大臣の認可を受ければ、
その子会社の障害者雇用数を

親会社および企業グループ全体の雇用分として
合算することが認められています。
細かい要件などについては長くなりますし、
この記事の趣旨からは外れるので割愛します。
詳しく知りたいという
メッセージを頂けば、改めて書きます。
または、
こういうタイプの記事はネットにたくさんあるので
検索して頂いても良いかと思います。

特例子会社見学会に参加しての収穫

①車椅子で本格的なラッシュを体験できたこと

現在、大阪に「向かう」ラッシュアワーの電車
に乗って私は通学しています。

ラッシュ時は、車内で車椅子を不用意に動かせず、
目的の駅で降車するのに苦労するくらい混雑しています。

車椅子に座っている私の周りに
人の壁があって人の身体しか見えない感じです。

こうした状況への慣れは人にとって
大きな財産になります。
慣れは対応力と言い換え可能だと考えています。

今回、大阪に「向かう」
電車だけでなく、大阪市内
のラッシュアワーの電車で移動しました。
混み方のレベルが違いました。

車椅子は構造上フレームの中に
人は入ってきませんから、
身体接触はよほどでないとありません。

しかし、今回は押された人のカバンが
身体にガンガン当たりイラッとはなりませんでしたが、
イタッとなりました(笑)。

②特例子会社の充実した配慮の状況を知れた

特例子会社では相当数の障害者が働いています。
実際、健常者より障害者の方が多いです。

職場環境が、ハード・ソフト両面において
働きやすくなっている必要があるということです。

見学した企業の例をいくつか

(肢体不自由者向け)
・車椅子が余裕で2台乗れるエレベーターが2基稼働
・各フロアに多目的トイレがあり、かつ使用状況が
デスクにいながら分かるランプを設置

(聴覚障害者向け)
・光で打ち合わせ開始などの情報を伝達するための
パトライトや緊急事態を知らせるフラッシュライトを設置
・音声認識アプリ「UDトーク」の使用を可能にする
タブレットを従業員に配布
・委員会活動として高頻度で手話学習の時間を確保など…

他にも机の間が広く、見学時も自走式車椅子の方が
結構なスピードで車椅子を走らせ、デスクのコーナーを
手で掴み、方向転換をするなど迅速に仕事をしていました。

③生の情報をとれた

仕事をしているフロアの様子を側で拝見しました。

障害者の仕事というのは障害特性に応じて
処理しやすいように切り出されるのが
一般的です。

その中でも障害者数が極めて多い
特例子会社ではとてもシステマティックな
分業体制ができあがっていると感じました。

これは定型業務がずっと続くことを意味します。

どんな仕事にもやり甲斐はあるので
型通りの仕事だけをするのが悪い、
とは思いません。

ただ、この仕事を毎日
継続していくのは私には
向いていないと感じました。

これが応募しなかった理由です。

更に、質疑応答の時間があったので
気になった点を質問しました。

直接企業の方から
一定数の人間の前で疑問点について
お答え頂けました。
これが見学会や説明会の良さです。

個別に問い合わせた場合、
それが企業としての公式見解なのか
オフィシャルサイトに書いていなければ
検証しようがないです。

一定数の人が他にいれば、
ある意味証人になる
という力が担当者に加わるので
個別よりもキチンと
答えて頂ける可能性が高いです。

しかし、就活スタート一社目に見た企業が
校指定求人というのも
実は積極的に応募しにくい
理由となりました。

「あなたの学校の生徒限定で求人を出します」
という条件は学校と企業に信頼関係がないと成立しません。

これを壊すような行為
つまり、内定が出た場合にそれを
辞退することはできないのです。
見学にあたり、この説明が
学校サイドからありました。

ですので、私は見学に留め、
他も見てみようと結論を出したのです。

特例子会社の意義

前述の通り、特例子会社制度の根底には雇用率があります。

要は、働く障害者を増やすための政策です。

企業はこの制度を雇用率達成のための手段
として活用します。

制度を概観した部分で触れませんでしたが、
雇用率未達成企業は納付金という罰金
のようなモノを支払う必要があります。

他方でそのお金が達成企業に助成金
として回る仕組みです。

では、この制度が単なる
雇用率至上主義になっているか、
と言うとそうではないと私は考えています。

まず、政策としてはかなり合理的だと思います。

というのも、雇用率制度によって雇用
が増えやすい(障害者の仕事が生まれる)のは勿論、

助成金以外の面でも企業にとってはメリットが
あるからです。

特例子会社も様々ですが、
親会社の売上を直接生まない事務的な仕事(スタッフ部門の仕事)
を集約して、本来的にコストになっている部分を
障害者の仕事にすることで賃金を支払い
CSR((企業の社会的責任)を果たせるからです。

そして、この賃金の原資に助成金を使えるので、
特例子会社を作れる企業が
活用しない選択は卵を特売の日以外に買うようなものでしょう。

事実、大企業の多くは特例子会社をつくっています。

一方の障害者にとっては、
この選択肢があるのは
間違いなくいいことです。

これはシンプルに選べないより
選べた方がいいからです。

選択肢の一つとして、
その目で見て、
私のように基準を明確にして選べばいいでしょう。