法改正を活かせるかどうかは我々次第

1.改正内容の概要

害者雇用率制度:事業主は、
全労働者のうち一定率(法定雇用率)以上の身体障害者・知的障害者を雇用する義務があります。
この義務は「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定められています。
なお、「精神障害者」についての雇用義務は無いですが、
雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したのと同じようにカウント可能です。

2013年4月1日〜2018年3月31日の間の民間企業の法定雇用率は2.0%で、
2018年4月1日から2.2%に変更となります。

障害者雇用率の引上げ

「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、
少なくとも5年ごとに雇用率を見直す必要があるとしています。

これを受け厚生労働省は、
2018年4月1日より雇用率を引き上げると公表しました。
現在(2017/9/21)時点での予定は、以下の通りです。

障害者雇用率の引上げ予定

民間企業

  • 2013年4月1日〜2018年3月31日:2.0%
  • 2018年4月1日〜当分の間:2.2%
  • (当分の間後〜2021年3月31日迄のいつか)〜:2.3%

国・地方公共団体・特殊法人

  • 2013年4月1日〜2018年3月31日:2.3%
  • 2018年4月1日〜当分の間:2.5%
  • (当分の間後〜2021年3月31日迄のいつか)〜:2.6%

都道府県等の教育委員会

  • 2013年4月1日〜2018年3月31日:2.2%
  • 2018年4月1日〜当分の間:2.4%
  • (当分の間後〜2021年3月31日迄のいつか)〜:2.5%

情報源: 障害者雇用率の引上げと税制優遇の最新情報 [2017年版] | バックオフィスの基礎知識

上記引用文について補足です。

未達成の場合は未達一人につき、月5万円の障害者雇用納付金を納付することになります。
逆に、常時雇用している労働者数が100人を超える企業で、法定雇用率を達成していれば、
障害者雇用調整金として、法定雇用障害者数を超えて雇用している障害者数に応じて、
1人につき月額27,000円が支給されます。

ただ、採用するとさすがに月の給与が5万では済みませんから、
この制度設計が雇用促進にどの程度寄与するのか考えると、
ないよりはある方がマシというのが私の率直な印象です。

なお、今回の改正により、精神障害者も雇用率に含まれ、
雇用義務のある障害者の対象となります。

ちなみに、発達障害も精神障害の一部として定義されています。
この精神障害者も対象となる事が雇用率が引き上げられる背景にです。

更に、引用文中の2021年3月31日迄のいつかと言う部分は、
ネットで調べた限り、計画段階ですが、2020年度とする情報が散見されました。
東京オリンピック・パラリンピックの年なので、
政策を打つタイミングとしては
そうなる気がします。

 

さて、障害者の働く意欲は高く、
職場で働く環境や支援態勢も整備されてきたこともあり、

企業で働く障害者の数は年々増加しています。
企業で働く障害者は16年6月時点で約47万4千人に上り、
13年連続で過去最高を更新しています。

しかし、雇用は増えているものの、
法定雇用率を達成している企業は、
全体の48.8%にとどまっているという現状もあります。

 

2.障害者雇用に吹く追い風

前述の通り、この法律の制度設計が
事業者にとって障害者を雇用する
強いインセンティブになると私は思いません。

しかし、その他の要因と相まって、
少なくとも雇用率の更なる引き上げが
計画されている2020年度前後までは、
障害者の就労は伸び続けると見ています。

実際、私が支援機関で働く方に話を
伺ったところ、改正を見据えてか、
既に求人数が明らかに増加傾向
にあるるそうです。

お金の問題もありますが、
「法定」雇用率な訳で達成しなければ、
事業主としての社会的責任を
果たしていないことになります。

それに、東京オリンピック・パラリンピック
がある事のインパクトは大きいと思います。

開催に向けて、ハードの整備自体は
東京が中心にはなりますが、
バリアフリー化の機運が熟し、
実際に進むでしょう。

それは日本全体に
波及していく事が期待されます。

そうなると、外に出る障害者も増えるはずです。
社会全体がそういうムードになれば、
働く障害者が増え、街で接する機会も増える。
そうなっていけば、障害者がそんなに特別な存在ではない
という好循環が生まれるはずです。

働く事を希望するチャレンジドにとっては、
好機到来で、積極的に動くべき時期です。

障害特性と能力に応じて、合理的配慮と
(他人が強制するモノではありませんが)本人の意思
が揃えば、多くの場合、障害があっても
その人に合った仕事ができると思います。

憲法上、勤労と納税は義務ですが、
権利でもあると考えます。
なるべく多くの障害者が
働く事で社会参加することを
願っています。

3.実効性のある改正にするために求められること

ところで、そのような好循環を呼ぶには、
向き合わないと行けない課題が当然あります。

就労は採用がスタートであり、
その後が大切です。
しかし、現状人材が定着しにくいという面もあるようです。

障害への配慮は必要だが、あとは同じように接する

障害者雇用において、合理的配慮の提供は事業主の義務
として法律上明文化されています。

法律上は企業側に求められている訳ですが、
それがスムーズにできるように障害者側にもすべきことがあります。

障害者自身が障害特性をキチンと説明し、
それ故に配慮の必要な部分、
できること、できないこと、
をキチンと整理して伝える。

この配慮以外については、職場では
「障害者だから」と“お客様”のように
扱わない事が必要かと思います。

その意味でも、障害の有無に関わらず成長ややり甲斐を
実感できる職場環境を構築する事が大切だと思います。

イメージしやすい身体障害とその他の障害との差をいかにして埋めるか

身体障害はその特性が
健康な人にもイメージしやすく、
配慮もしやすいのではないでしょうか?
実際、車椅子の私に親切にしてくださる方は多いですし、
巷間言われる心のバリアフリーが課題ということを
私自身はそこまで感じません。
視覚、聴覚障害や内臓の障害についても、
こうしたらいいと言う知識があれば、
そこまで戸惑わないと思います。

他方で、知的、精神障害の人は私自身の肌感覚では、
街にいても分からない場合が身体障害に比べると多いです。

この私の肌感覚は最近変わりつつあります。
障害者が多くいる場所にいる時間が増えて、
知的障害者、精神障害者と接する機会が増えたからです。

要は慣れの問題で障害当事者と接する事で
この課題は確実に解消できます。

これは働く障害者が増えれば、
街に障害者が増えるので
そうなっていき、知らないからと
遠ざけさえしなければ、
そんなに心配する必要はないと楽観的に見ています。

そのためにも、見て分かりやすい私のような身体障害者の存在から
世間の人が障害者に慣れていけるように、
声をかけられやすいように
行動する。

必要な場面ではこちらからヘルプをお願いするなど
積極的にコミュニケ-ションをとっていきます。