1)不登校の現状

今、どれくらいの割合で子どもたちが不登校なのかご存知ですか?

文部科学省の平成29年度の調査結果によると、小学校で185人に1人(0.54%)、中学校で31人に1人(3.25%)、合計すると68人に1人(1.47%)が不登校児童生徒となっています。出典:文部科学省「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(2018年(平成30年)10月25日)

 

2)時代で変わる不登校の捉え方

不登校研究の歴史を振り返ると、1941年に「学校恐怖症」ということばを世に送り出したJonson.A.Mらの存在があります。彼らは不登校症例に詳細な検討を加えました。

不登校になる要因として、子どもの急性不安と同時に存在する母親の不安、および母子間の依存関係を指摘し、不登校を「神経症的な障害」と捉えました。

これまでの「怠学」と区別して「学校恐怖症」の用語を提唱したわけです。

それ以前にも、学校に行かない原因は母子関係から来る「分離不安」にあるとする見方がありました。つまり不登校になるのは親のあり方が原因だというものです。現代においても不登校の原因を母子関係から捉える人もいます。

しかし本当にそうでしょうか。これまで実際に多くの不登校生徒と関わってきましたが、そのような一元的な理由だけで不登校の原因を説明できたケースはかなり少ないのが実感です。

もちろん親の対応が変わることで不登校が改善していくケースはあります。ただ不登校には、単に親子関係だけではなく、現代の社会システムや学校構造などが大きく関わっているという視点は忘れてはいけません。

 

3)時代で変わる不登校支援の方法

「不登校」はほんの少し前までは「登校拒否」と言われていました。

その名残のひとつの例は、自治体が取り組んでいる「不登校生徒」を対象にした「適応指導教室」でしよう。たとえ一人一人を大切にした不登校支援をされていたとしても、「学校へ行かないあなた」を学校に「適応」するように「指導」しましょうというこのネーミング自体に拒否感を持つ生徒たちもいます。

最近の不登校生徒への支援は「学校は行くべきところだ」「なんとしても登校させなければ」という学校中心の指導から、「本人の気持ちが第一であり、嫌がるならば無理に登校させなくてもかまわない」「学校以外の学びの場を認めていこう」といった個人中心の流れに移っています。

このように不登校を捉える視点や指導・考え方はその時代背景の影響を受け少しずつ変わっています。

 

4)学校という「場」からのアプローチ

不登校をあくまで本人の問題と捉えた上で、学校という「場」からのアプローチについて考えてみます。

不登校になる子どもと、学校に来ることができている子どもとを比較してみます。

彼らのこころの中の違いはなんでしょう。

色々ありますが、そのひとつに「自分の中での学校に対する位置付け」の違いがあるような気がします。

不登校の子どもの中には、学校というものに比較的大きな価値を置いている子は少なくありません。

学校に来ることが全く負担でない子に多くみられるのは、

「学校は自分の世界のひとつだけれど、それは大きな部分ではない」という心理傾向です。

つまり彼らは、世界を「友人も、アニメも、趣味も、部活も、異性も・・・・」というふうに捉えており、学校はその中では one of them(たくさんの中でのひとつ)でしかありません。

このことはとても重要です。

この違いから何がわかるでしょうか。

 

5)「居場所感」からの不登校支援

不登校を「場の病理」として捉える視点です。

不登校は「個人の心の問題ではない」という捉え方をするのです。

学校のだらしない部分(サブ・カルチャ-・コスモス)を尊重するのです。不純物の中にあるのが学校。それでいいのです。

つまり「いやだけど、まあ行ける。」「行ったら行ったで楽しい。」くらいで丁度いいと考えるのです。学校が合わない子を学校に合わせるより、学校以外の場所に目を向けることは支援のひとつのヒントになると思います。

また不登校傾向が見られる子どもと話してみると、「学校の中での居場所感がない」と訴える子がとても多いのが気になります。

「居場所感」とは何なのでしょうか。

「居場所感」は「安住感」に似ています。

つまり「自分がそこにいてもさげすまれたりしない感覚」です。

不登校傾向のある子どもから見て、

「居心地の良い学校」というものを考えるとき、今の学校の環境は子どもにとってどうでしょうか。朝から夕方まで同じ教室・・・というシチュエーションは実は精神的にかなりきついものがあります。

しかし、今の学校は保健室と教室以外に過ごせる場所は案外少ないのです。

 

6)人目を気にせず過ごせる安心感の保証

友だち作りがあまり上手でない子どもにとって、休み時間やお昼休みにも安心感があること、一人で過ごせる場所がさりげなく用意されていることは、登校を継続させるためにはとても重要です。

実際、お昼休みに安心して図書館で過ごせたことや、ベンチや休憩場所など学校内にあったことを感謝する声はよく聞きます。

つまりこれらは地味ながらも「環境面」からの不登校支援になっています。

学校の中に自分の居場所を見つけにくい生徒にこそ、ひとりで安心して過ごせる場所が学校の中に必要です。実はこの安心感こそが繊細な心を支える力強い支援になっています。

投稿者プロフィール

大隅順子
大隅順子
特別支援学校教諭・臨床心理士
宝塚発達心理ラボ代表 
http://ameblo.jp/takarazuka0797/

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